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「検証で終わらせない」——ドコモ雨宮大地さんに聞く、ユニパレット伴走で実現したプログラム刷新の舞台裏

「検証で終わらせない」——ドコモ雨宮大地さんに聞く、ユニパレット伴走で実現したプログラム刷新の舞台裏

インタビュアー:ユニパレット株式会社 代表取締役 彌重向太郎

インタビュー写真

NTTドコモグループの社内新規事業プログラム「docomo STARTUP」は、検証(PoC)から"事業化"へ橋を架けるために、2025年度に大幅リニューアルを実施しました。

その中心にいたのが、プログラム運営を統括する雨宮大地さん。刷新のパートナーとして私たちユニパレット株式会社が入り、CHALLENGEフェーズ(顧客課題・解決仮説の検証)の骨格をゼロベースで再設計しました。ヒアリング設計、ペルソナ定義、検証指標の合意、学習サイクルの明文化などを通じて、"うまくいった気がする"感覚を排し、再現可能な学びを積み上げる運用へと進化させました。

本記事では、プログラムの全体像、刷新前に立ちはだかった課題、そしてユニパレットと共に何をどう変え、どんな手応えを感じたのか——雨宮さんへのインタビューでお届けします。


「docomo STARTUP」とは

プログラムは「COLLEGE」「CHALLENGE」「GROWTH」の三段構成。まず基礎を学ぶ「COLLEGE」でアイデア創出や事業づくりの型を身につけ、「CHALLENGE」で仮説検証を繰り返して事業の手触りを得る。(※「CHALLENGE」フェーズからの参加も可能で、挑戦者のスキルに応じて選択ができる。)

最終フェーズの「GROWTH」では二つの"出口"を用意する。ひとつはドコモのマイナー出資を得て社外にスピンアウトする「STARTUPコース」、もうひとつはドコモ子会社として協業シナジーを活かす「AFFILIATEコース」だ。(※スピンアウトとは、企業が特定の部門や事業を分離して新会社として独立させることで、元の企業からの出資を受けない、もしくはマイナー出資で独立する場合をさします。)

docomo STARTUP プログラム構成

参照:https://startup.docomo.ne.jp/program/


まずは自己紹介をお願いします。

そうですね。2010年にNTTドコモへ入社して、最初は法人事業を担当しました。途中で経済産業省に出向して、AI・IoT・ビッグデータの政策に関わったのが、スタートアップと本格的に出会ったきっかけです。

ドコモに戻ってからは経営企画部で中期経営計画を担当し、その後はCVC(ドコモ・ベンチャーズ)で出資業務をやっていました。で、2024年6月から現行のdocomo STARTUPの運営に関わっています。

雨宮大地さん


docomo STARTUPの中身を、もう少し噛み砕いて教えてください。

三つのフェーズが肝ですね。学ぶ(「COLLEGE」)→挑む(「CHALLENGE」)→育てる(「GROWTH」)。

「COLLEGE」で"仮説の立て方"を身につけて、「CHALLENGE」で実際に検証を回す。ヒアリングや試作、ユーザーに触ってもらうところまでやります。

「GROWTH」では二つの出口を用意していて、スピンアウトか子会社化。案件の性質に合わせて、最短で成長しやすい道を選べるのが特徴です。

そもそも、なぜ社内から新規事業を?

一言でいえば、「通信の次の柱」をつくるためです。通信を軸にしつつ、よりスケールの大きい事業を連続的に生み出していきたい。だから、社内で挑戦できる場をちゃんと設計する必要があるんです。

発足の経緯は? 前身プログラムから何が変わったのでしょう。

前身は「39works」という社内新規事業プログラムで、約10年運用してきました。アイデアもたくさん出て、会社化したものもあります。ただ、さらに規模と件数を伸ばすために、制度をリブランディングして「docomo STARTUP」として再設計した、という流れです。


大企業の新規事業、どんな壁にぶつかりがちですか。

大きく二つです。

一つ目は**「機能最適化の壁」**。大企業は既存事業に合わせた機能単位で動くので、少人数で全部を前に進めるスタートアップ流がやりにくい。

二つ目は**「ガバナンス/規模要件の壁」**。社内で進める以上、初期から"規模感"を求められがちで、投資や人員をかけづらい。結果、小さくまとまりやすいんです。

その壁、docomo STARTUPではどう越えましたか。

キードライバーはスピンアウト(マイナー出資)です。持分法の外で動けるので、意思決定も検証も自由度が上がる。

もう一つはチーム設計。ファウンダー含め最大3人で、CEO・CTO・COOみたいに役割をはっきりさせる。足りないスキルは育てながら補完していく前提で、"人"で機能の壁を超えるイメージですね。

制度面の魅力を一言でいうと?

「起業家ファースト」です。スピンアウト時のインセンティブを含めて、挑戦する人が前に進める設計になっている。

それとコミュニティへとしっかり開いていること。社内に閉じず、外部の投資家やパートナーとも連携できるようにして、成長の選択肢を広げているのが良いところだと思います。

インタビュー風景


一方で、プログラムの課題もあったとか。

2024年度に顕在化したのが「検証」と「事業化」のギャップです。

たとえば共感が取れた=もう事業になる、という早合点に陥りやすい。実際は再現性のある需要へ拡張するシナリオや売上設計がないとつながらない。ここに、橋がかかっていなかったんです。

その課題に対して、ユニパレットと何をやったのか。

「CHALLENGE」フェーズを抜本的に再設計しました。うちだけでは持ち合わせていない知見が多かったので、新規事業立ち上げの実践知を持つユニパレットさんに入ってもらって。

ヒアリング設計、ペルソナ定義、検証指標の事前合意、分析〜打ち手更新の明文化など、"再現可能な検証"に寄せるオペレーションへと刷新しました。

具体的な変化、手触りはどうですか。

社員主体の伴走体制に切り替えたのが大きいです。2024年度は外部委託でしたが、2025年度は社員が深く伴走するスタイルに変えました。その結果、ヒアリング→分析→仮説更新のループが太く、速く回るようになりました。

正直、社員伴走のほうが良いという手応えが出ています。

プログラム運営の様子


現在の進捗とアウトカムを教えてください。

約300件のアイデア応募から審査を経て、11件が選抜。いま「CHALLENGE」で検証中です。

入口で市場性・優位性を強く意識させる設計に変えたことで、事業案の質が全体的に上がったと感じています。生成AIを活かした提案も増えて、拡張余地の大きいテーマが揃いました。

参加者(あるいはスピンアウトしたCEO)の反応は?

「起業家ファーストの制度設計」「検証支援が手厚い」という声をいただいています。中には「この制度があるなら挑戦しない理由がない」と言ってくれる方も。

2025年度の体制では、社員伴走が深くなったぶん、検証の前進速度が上がっているという実感があります。

最後に新規事業を成功させる秘訣を3つ挙げると?

そうですね、大きく三つあると思います。

まず一つ目は市場選択を間違えないことです。入り口で市場性をしっかり見ておかないと、後から修正が効かなくなってしまうんですよ。

二つ目はとにかく行動すること。課題だと思ったらすぐに関係者へヒアリングに行くとか、現場に飛び込んで実際に体験してみるとか。そういう行動量が事業を前に進める力になります。

そして三つ目は覚悟を持ってやり切ることですね。一度テーマを決めたら迷わずに、一本筋を通して最後までやり抜く。その覚悟が、自分にもチームにも大きな力を与えてくれると思います。


まとめ

docomo STARTUPのリニューアルは、「検証→事業化」の断絶を埋めるための設計と運用の再定義でした。スピンアウトという自由度と社員伴走の密度、そして再現可能な検証フレーム。この三拍子で、社内からでも"本気のスタートアップ"が生まれる環境が整いつつあります。

ユニパレットとしては、今後も検証設計の質とスピードを上げ続け、成功確率の高い事業を連続的に送り出すための伴走を続けていきます。

ユニパレット